空想の夜の航跡

日々の暮らしの中で調べたこと、感じたこと、読んだ本の感想など

はたらくってなんだ?(感想)

『僕たちはいつまでこんな働き方をつづけるのか』

 木暮太一 星海社新書     ★★★★☆

 

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今まで、働くためのノウハウやスキルに関する本はそれなりに読んできた。

しかし、「働くこと」自体についてはあまり考えたことはなかったような気がする。

本書は、後者の疑問に関して回答のひとつになりうる本である。

 

資本論」と「金持ち父さん貧乏父さん」

まずこの有名な2冊の本から話が始まっている。

一方はマルクスが資本主義の限界を論じた古典であり、他方は不労所得(投資)を薦めたベストセラー。全く分野の違う2冊である。

しかし著者はこの2冊が実は本質的に同じことを言っていることに気づき、そこから資本主義社会の中で労働者としてどのような働き方をするべきかを説いていく。なかなか興味をそそられる展開である。

 

ところで、この本の特徴は全体構成がしっかりしておりデザインも工夫されていて、非常に読みやすいことである。

本書で最終的に伝えたいことは比較的簡明なものだが、そこに至る道筋を順を追ってとても丁寧に明らかにしている。話が飛ぶ部分がなく全体の流れがわかりやすいのだ。

内容もさることながら、構成がわかりやすい!、と妙なところに感心しながら読んだ。

 

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仕事における「満足感」と「必要経費」

この本は自分がこれからの働き方について考えていてたまたま見つけたのだが、それまでも漠然と、「働き方って、仕事の「満足度」(給料や地位)と、それに必要な「コスト」(労力や時間、精神的消耗)とのバランスだよなー」などと考えていた。

本書ではその「満足感」と「必要経費」の差分(それを「自己内利益」と定義している)に注目し、それをプラスにする働き方を目指す。つまり、

  1. 満足感を変えずに必要経費を下げる
  2. 必要経費を変えずに満足感を上げる
ということである。
もともと自分が考えていたことと近かったからかもしれないが、本書の帰結は納得できたし、より具体的に働き方を考えていく上で役立つ内容であった。
 
なお、本書は現在絶版のようだが、
『人生格差はこれで決まる 働き方の損益分岐点

と改題され文庫版として出版されている。 

 

僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか? (星海社新書)

僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか? (星海社新書)

 

 

これからの働き方

本書では「必要経費」の中でも「精神的苦痛」を小さくすることが重要であるという。

そのためには本書にもあるように精神的苦痛の小さい仕事を選ぶのも一つだが、ではすでに働いている人が今の仕事を続ける場合はどうすればよいのだろうか。

 

結局、その人の「仕事観」が大きく影響していると個人的には思う。

世の中には仕事をゲームのように見る人もいる一方、どんな仕事もいい加減にできない生真面目な人もいる。両者の「仕事観」(仕事へのスタンス)はまるで違うだろう。

前者のようなスタンスであれば、仕事による精神的苦痛は小さいように思える。

 

仕事へのスタンスというものは通常あまり変えようとは考えないのかもしれないが、精神的苦痛が最も小さくなるようそれを意識的に変えていくことはできないものだろうか。

 

この本をヒントにしながら、働き方については更に考えてみたい。

 

改訂版 金持ち父さん 貧乏父さん:アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学 (単行本)

改訂版 金持ち父さん 貧乏父さん:アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学 (単行本)

 

 

 

超入門 資本論 (日経ビジネス人文庫)

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